たくさんの男達の死を見てきた。
絶対に死ぬわけがないと思えるような英傑や勇将でさえあっけなく死んでゆく乱世。
華々しく死んでいった者、流れ矢(球)に当たって死んだ者、病に倒れた者、パタヤで玉砕した者、タニヤの陰謀に陥った者。
敵であった者も味方であった者も皆どこかで認め合っていた。
同じ乱世を生きてきた。
数年の駐留(駐在)期間を制した者がいた。
数日の進攻を達成した者もいた。
乱世を嫌って山へ逼塞した者もいた。
気がつけばこの乱世を未だに闘い続けている者は自分独りになってしまった。
こんな闘いなど始めなければ良かったのか。
遠く故郷の長万部でアイヌ口伝を口ずさみながらカニ飯を炊いて生業とし老いた母と共に過ごしていればよかったのか。
私のタイゴルフ場全国制覇の夢など可愛いキャディさん達の生活とは全く関係ないではないか。民は戦さえなければそれで幸せではないか。
私が全国制覇などと言い出したおかげでキャディさんは困惑し、逆に世は乱れ、いつまでたっても民に平安がおとずれないのではないだろうか。
乱世に対する嘆きと世に出られない恨みを盛り込んだカニ飯を炊き続けていればよかったのではないだろうか。
『乱世を収束させる』などと立派なことを言ったところで、それは詭弁でしかなく、ただ単に自分の我でしかなく、己の欲求を満たしたいだけなのではないだろうか。
世に出たいという己の欲望を満たすべく、いやらしい煩悩を隠すために偉そうな大儀名分を打ち立てただけのことではないだろうか。
数々の乱交を隠し『お父さんはきちんとゴルフしてるんだよ』と娘に言い訳するために全国制覇などと叫んでいるのではないだろうか。
長万部でカニ飯を炊いていればよかったのかもしれない。
しかしゴルフと出会ってしまった。
タイと出会ってしまった。
タイxゴルフとなってしまった。
キャディさんと出会ってしまった。
タイxゴルフxキャディさんとなってしまった。
タニヤと出会ってしまった。
タイxゴルフxキャディさんxタニヤとなってしまった。
ナナやパッポンやその他秘密の場所と出会ってしまった。
タイxゴルフxキャディさんxタニヤ+秘密の場所となってしまった。
志を持ってしまった。
タイxゴルフxキャディさんx(タニヤ+秘密の場所)x志=タイゴルフ場全国制覇…

今更、もう嘆くまい。
私がここで全てを投げ出してしまうことは、先に逝ってしまった者たちを裏切ることになるではないか。
私が忘れないということは、本当には死んでないということではないのか。
私が忘れてしまったら、彼らの闘いは、死は、いったい何だったのか。
彼らとは眠りにつく前にこうして目を瞑れば暗闇の中で会えるではないか。
「まだやってるの?」などと呆れたような軽口を叩きながらずいぶん懐かしい顔も集まってくるではないか。

私は駆け続けます。
赤兎(別名トンディ号)と共に駆け続けます。
自分の命の分だけ駆け続けます。
髪は白くなった。
だけど心まで白くなってはいない。

でも泰三はちょっと疲れました。

…コンケン行く時は飛行機に乗らせてください。
あとチェンライも飛行機でお願い。












黒幕さん(黒)「ティーチャー誰か亡くなったんですか?」
愚騾馬(愚)「そういう心境なんでしょ、きっと」
黒「この人、完全に自分の世界にイっちゃってますね」
愚「それも幸せのひとつの形だと思うよ」
黒「ティーチャーはいったい誰と闘ってるんですか?」
愚「そういう心境なんでしょ、きっと」
黒「なんですかこのヘンな方程式は?」
愚「中央大学出てるからね」
黒「私、タニヤ産業大学」
愚「なにそれ?」
黒「タニヤの奥にあります」
愚「年齢からいってバリケード世代だね、ティーチャー」
黒「なんですか、それ?」
愚「私はバブルの世代」
黒「僕はポケモン世代」
愚「なに、それ?」
黒「コンケンって車で5時間くらいかかるんじゃないんですか?」
愚「頼まなくても飛行機乗るでしょ普通、車で行く気だったの?この人。それに誰に頼んでるの?」
黒「日帰りするつもりだったんじゃないですか、ティーチャーだから」